生前にM&Aの基本合意、買収査定がなされていたが、譲渡契約の前に株主に相続が発生した場合の取引相場のない株式の評価

令和6年1月18日東京地裁の事案となります。

 

【概要】

被相続人の生前にM&Aを目的として相手先と交渉をして基本合意及び買収査定まで行われていたが、譲渡契約前に相続が発生した(H26.6.11)。

H26.7.14に相続人との間で譲渡契約を締結し、代金決済を行った。

この場合、被相続人が所有していた取引相場のない株式の評価はどのように判断するべきか、というもの。

課税庁は1株当たり80,373円(株価総額約17.2億円)と主張したが、納税者は類似業種比準価額に基づく1株当たり8,186円として評価し、申告した。約10倍の評価差額で税額にして数億円が変わるケースです。

 

【結論】

納税者の主張が認められる。

 

【理由】

被相続人の生前に実質的に売却の合意が整っており、かつ、売却手続きを完了することができたにもかかわらずにしなかったなどの特段の事情がない限り、原則通りに取り扱うことが相当である。相続直後に評価通達の定める方法による評価額を著しく超える価額で売却したことのみをもって、直ちに納税者側に不当、不公平な利得があるという評価をして総則6項を適用することは相当ではない、と判断されております。

 

似たような事案として、M&Aの前に諸事情により取引相場のない株式を贈与・売買するケースです。

こちらも不透明なケースが多いため、課税庁の見解が出されることを願っております。。。

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