2023年度税制改正大綱発表を受けての贈与の考え方

16日金曜日、税制改正大綱が発表されました。

これを受けて、今後の贈与と相続についてどのように考えればよいか、次の通りまとめます。

結論、一定の富裕層の方は令和8年12月31日まではこれまでと同じ贈与の制度という認識で差し支えありません。

ただし、暦年贈与と相続時精算課税制度どちらを選択した方が有利かについては、令和6年1月1日以降の贈与について要検討となります。

<1>暦年贈与

いわゆる年間110万円の贈与は無税という考え方であり、一般の方が想定される贈与を暦年贈与といいます。

①令和8年12月31日まで

これまでの暦年贈与の考え方と変わりません。

相続または遺贈により財産を取得した者(保険金取得者を含みます)は、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産に関しては、相続税の計算上は贈与がなかったものとして、贈与時の価額にて相続税の計算対象となります。たとえ10万円であっても税制上は加算の対象となります。

②令和9年1月1日以降

①の考え方に加え、相続開始前3年超7年以内の贈与についても、相続税の計算対象となります。

ただし、相続開始前3年超の贈与については、100万円以下の贈与財産は加算対象外となります(110万円ではありませんので注意)。

なお、例えば令和9年1月1日に相続発生したケースで、7年前の令和2年1月1日以降の贈与から対象となるかというとそうではなく、あくまでも令和6年1月1日の贈与分から、順次7年間までさかのぼることになります。

これを、まとめると次の通りです。

1.令和9年1月1日~12月31日までの相続→贈与加算対象期間は令和6年1月1日~(実質3年~4年以内の贈与を加算)

2.令和10年1月1日~12月31日までの相続→贈与加算対象期間は令和6年1月1日~(実質4年~5年以内の贈与を加算)

3.令和11年1月1日~12月31日までの相続→贈与加算対象期間は令和6年1月1日~(実質5年~6年以内の贈与を加算)

4.令和12年1月1日~12月31日までの相続→贈与加算対象期間は令和6年1月1日~(実質5年~6年以内の贈与を加算)

5.令和13年1月1日~12月31日までの相続→贈与加算対象期間は令和6年1月1日~(実質7年以内の贈与を加算)

<2>相続時精算課税贈与※(制度そのものは一番下の参考をご参照ください)

①令和5年12月31日まで

相続時精算課税制度のこれまでの考え方としては、暦年贈与の「毎年の」110万円の控除はなく、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。

つまり、2,500万円までは、同じ贈与者からの贈与は一生涯贈与税がかかりません。

ただし、すべての贈与を(それが例えば10万円であっても)申告し、贈与時の価額にて相続税の計算対象にしなければいけませんし、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、いわゆる「暦年贈与」へ変更することはできません。

②令和6年1月1日以降

①の考え方に加え、毎年年間110万円までの贈与は2,500万円の特別枠の有無にかかわらず加算する必要がなくなります。

つまり、暦年贈与は令和6年1月1日~順次贈与の加算対象期間が3年~7年まで拡大されますが、相続時精算課税制度を選択すれば、年間110万円までの贈与については、たとえ1年前の贈与であっても7年前の贈与であっても加算対象外となります。これはそもそも110万円以下の贈与しか想定していない方については、非常に有利な制度となります。

ただし、おそらく相続時精算課税制度の特徴から、110万円以下の贈与であっても毎年の贈与税の確定申告を求められますので、注意が必要です(ここは現時点の推測です)。

まとめると、令和6年1月1日以降の贈与について、110万円以下の贈与しか想定していない方は相続時精算課税制度が有利、110万円を超える贈与を想定している方は、どのタイミングで相続時精算課税制度を活用するかを毎年要検討、ということになるのではと想定しています。

資産規模の大きな一定の富裕層の方につきましては、基本的には暦年贈与が有利なことに変わりないと考えられます。

あくまでも現時点の想定となりますのでご留意ください。

※参考

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳(注1)以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、いわゆる「暦年贈与」へ変更することはできません。

(注1) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

トップへ戻る