相続税法では、プラスの財産からマイナスできるものがあります。その一つが葬式費用です。(相続税法第13条)
ただし、葬式といっても、具体的に何が葬式費用として控除できるのかについては、法令では定められておりません。
(1)控除できるもの
そこで、相続税法基本通達13-4には、葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとすると記載されています。
① 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
② 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
③ ①又は②に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
④ 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用
具体的には、通夜・本葬費用にかかわるすべてのものが対象になる、と考えてよいでしょう。弔問客に対しては飲食代の提供を行いますが、こちらは対象です。葬式当日の交通費(タクシー代等)も必要に応じて控除の対象にして差し支えないと考えられます。
なお、葬式は、宗教や地域的習慣によりその様式が異なるため、個々の具体例を示すことは困難であり、社会通念に即して判断することになります。
(2)控除できないもの
相続税法基本通達13-5において、次に掲げるような費用は、葬式費用として取り扱わないものとすると記載されています。
① 香典返戻費用
② 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
③ 法会に要する費用
④ 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用
①香典は受け取る際に贈与税が非課税となるため、返戻費用についても控除できないものとされます。
②墓地等の財産については相続税が非課税となるため、控除の対象となりません。
③法会・法事(初七日、四十九日、一周忌、三回忌など)については、死者を葬る儀式を葬式と呼ぶのに対して、法会は死者の追善供養のため営まれるものであり、葬式費用の範囲外となります。
④医学上の特別の処置に要した遺体解剖費用は葬式とは関連がないため、控除できません。
(3)誤りやすい事例
①領収書がない葬式費用
先にも述べましたが、御布施、御車代、心付等は領収書が発行されないことが多いですが、領収書がなくても葬式費用として控除できます。控除するためには、支払った金額・日付・支払先(僧侶、〇〇寺など)をメモに残しておく必要があります。
②香典返しと会葬御礼(かいそうれいじょう)
香典返しとは、香典を包んでくれた方に後日渡すお返しです。また会葬御礼とは、通夜や告別式などに来ていただいた方に感謝の気持ちを込めて渡すものです。香典をいただいていない場合でも、弔問客の全員に渡します。
判断が難しいところですが、一般的には後者に該当するケースが多いと考えられ、控除の対象になるケースが多いと考えます。
③供花代(きょうかだい)
通夜や告別式など葬儀で故人に供える花を供花といいます。喪主・施主(せしゅ)が負担した供花代のみ葬式費用として控除できます。領収書が親族名であったとしても、実際に喪主・施主が負担している場合には、控除の対象となります。
④納骨費用
法会に要する費用は原則控除の対象となりませんが、納骨費用は葬式費用として控除できます。ただし、石屋さんに戒名彫刻と納骨を依頼する場合には、納骨に係った費用のみ控除対象となりますので注意が必要です。