相続税の税務調査対策で最も重要と言っても過言ではない、預金調査についてコメントさせていただきます。
私が相続税申告業務を請け負う際には、必ず過去最低5年(できれば通帳があればある分すべて)お預かりして、預貯金のお金の流れを精査します。それは、生前のお金の動きを知ることで、名義預金対策や贈与リスクの確認、場合によっては節税につながるケースもあるからです。時々生前贈与はないから見ないでよいです、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、今回は最近実際にあった事例をご紹介します。
あるお客様の相続税申告で預金調査をしていると、5年前くらいの通帳に、大きな振込履歴が見つかりました。約3,000万円です。
手書きで相続税と書いてありました。
私は初回面談で、被相続人が過去10年以内に相続によって財産を取得したことがありますか?と必ず確認します。その際の答えはNOでした。したがって、相続税と手書きで書いてあったときは、疑問を持ちました。何か他の税金の間違いかなとも思いました。
念のため、改めてお客様に確認してみると、被相続人が親から相続で財産を取得していたのです。しかも税負担も大きいことから、今回の相続税申告において、最大で1,000万円を超える税額が減額できる可能性があったのです。
この事例から分かるポイントは次の点です。
①過去の預金調査を必要ないと思っても必ずすること
②通帳に手書きで書くことは重要であること
金額が大きいため必ず確認はしますが、仮に通帳に手書きで書いてなかった場合には、具体的な質問ができずに、お客様も気づかなかったかもしれません(実際に被相続人は同時期に多額の所得税の納税等もしているため、気づかない可能性がありました)。
よく過去の通帳は捨ててしまったなどとおっしゃるお客様はいますが、実はあるにもかかわらず、不都合な情報があると考えてないと主張される方もいらっしゃいますし、ないといったからにはと破棄してしまう方もいらっしゃいます。
手書きメモは良い情報でも悪い情報でも捨ててはいけません。それは、必ず税務調査時に役に立つからです。
以上、皆様の気づきになれば幸いです。