解散登記をした法人の株式は相続財産となるのか

Q.私は有限会社について2010年に解散手続きをしましたが、再び事業をはじめることがあるかもしれないと考え、清算手続きはしませんでした。

すると、10年経過した2020年に、法務局の職権により登記記録が閉鎖されました。

その後特に手続きはしていません。

この状況は、会社が消滅したと考えてよろしいでしょうか。

そして、消滅したとすれば、自社株式の相続についてはないものと考えてよろしいでしょうか。

 

A.いいえ、消滅したことにはなりません。清算結了登記をして、はじめて消滅したことになります。

したがって、相続財産となりますので、遺産分割協議等により相続する者を決定する必要があります。

なお、清算中の評価会社の株式は、清算の結果分配を受ける見込みの金額(2回以上にわたり分配を受ける見込みの場合には、そのそれぞれの金額)の課税時期から分配を受けると見込まれる日までの期間(その期間が1年未満であるとき又はその期間に1年未満の端数があるときは、これを1年とします。)に応ずる基準年利率による複利現価の額(2回以上にわたり分配を受ける見込みの場合には、その合計額)によって評価することとされています。

しかし、実務上は分配を行わず長期にわたり清算中のままになっているような会社が多いことから、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価するケースが多いと考えられます。

登記記録閉鎖に関する根拠は次によります。第3項によれば、申し出がある場合には復活しなければいけない、とありますので、消滅したとは言えないことになります。

(商業登記規則)

第八十一条 次に掲げる場合には、登記官は、当該登記記録を閉鎖することができる。
一 解散の登記をした後十年を経過したとき。
二 次項又は第三項に規定する申出後五年を経過したとき。

三 第一項の規定により登記記録を閉鎖した後、会社が本店の所在地を管轄する登記所に清算を結了していない旨の申出をしたときは、登記官は、当該登記記録を復活しなければならない。

 

ちなみにですが、株式会社の場合には、みなし解散という概念があります(有限会社にはありません)。

最後の登記から12年経過している株式会社に対して、官報での法務大臣の公告と本店管轄登記所から公告が行われた旨の通知が行われようです。そして、みなし解散の登記から3年経過すると、「まだ事業を廃止していない旨」の届出が受理されない限り、その株式会社は二度と解散前の通常の事業活動を行うことができないということになります。ただし、この状況であっても、法人格が消滅するわけではなく、あくまでも清算結了登記が必要となるようです。

1人会社である株式会社の場合には、役員の任期を10年に設定するケースも多いかと思います。

このような場合には、10年後に役員の再任登記手続きをしなければいけないのですが、忘れてしまうケースも考えられます。

その場合、12年経過するとみなし解散となってしまうため注意が必要です。

 

(会社法)

第472条(休眠会社のみなし解散)
  1. 休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し二箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その二箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。
  2. 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。

第473条

株式会社は、第471条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合(前条第1項の規定により解散したものとみなされた場合を含む。)には、次章の規定による清算が結了するまで(同項の規定により解散したものとみなされた場合にあっては、解散したものとみなされた後三年以内に限る。)、株主総会の決議によって、株式会社を継続することができる。

 

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