未成年者控除と障害者控除の優先順位について

Q.あるお客様で、相続税の計算上、未成年者控除と障害者控除の両方が適用できる方がいらっしゃいました。

どちらも適用して税額がゼロとなる場合で、障害者の方の年齢的に障害者控除を優先して適用したい場合に、認められますでしょうか。

 

A.

<結論>

原則として、障害者控除を優先して適用し、残額について未成年者控除を適用することはできないと考えられます。

<理由>

相続税法第19条の4では、未成年者控除まで適用した金額をベースに控除すると規定されております。

また、19条の3では、未成年者控除については、「できる」規定ではないため、強制的に適用することになるためです。

したがって、未成年者控除をまずは適用し、その後まだ税額がある場合にはじめて障害者控除を適用することになると考えられます。

<例外>

ただし、政令第4条の3では、複数の扶養義務者がいる場合には、扶養義務者全員の協議により控除できる金額を決めることができると規定されております。

このようなケースでは、あえて未成年者控除を適用せずに、障害者控除を適用することもできると考えられますので、十分な検討が必要となります。

以下、参考として条文を記載します。

 

 

(未成年者控除)

第十九条の三 相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)に該当し、かつ、二十歳未満の者である場合においては、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円にその者が二十歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。

 前項の規定により控除を受けることができる金額がその控除を受ける者について第十五条から前条までの規定により算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額は、政令で定めるところにより、その控除を受ける者の扶養義務者が同項の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産の価額について第十五条から前条までの規定により算出した金額から控除し、その控除後の金額をもつて、当該扶養義務者の納付すべき相続税額とする。

(扶養義務者の未成年者控除)政令で定めるところ

第四条の三 法第十九条の三第二項の規定による控除を受けることができる扶養義務者が二人以上ある場合においては、各扶養義務者が同項の規定による控除を受けることができる金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。

 扶養義務者の全員が、協議によりその全員が控除を受けることができる金額の総額を各人ごとに配分してそれぞれその控除を受ける金額を定め、当該控除を受ける金額を記載した法第二十七条又は第二十九条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書を含む。)を提出した場合 これらの申告書に記載した金額

 前号に掲げる場合以外の場合 扶養義務者の全員が控除を受けることができる金額の総額を、各人が法第十九条の三第二項に規定する相続又は遺贈により取得した財産の価額につき法第十五条から第十九条の二までの規定により算出した金額によりあん分して計算した金額

(障害者控除)

第十九条の四 相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第二号から第四号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第一項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円(その者が特別障害者である場合には、二十万円)にその者が八十五歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。

 前項に規定する障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で政令で定めるものをいい、同項に規定する特別障害者とは、同項の障害者のうち精神又は身体に重度の障害がある者で政令で定めるものをいう。

 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「第十九条の三」と読み替えるものとする。

 

(扶養義務者の意義)相続税法基本通達

1の2-1  相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条((扶養義務者))の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)

(扶養義務者)民法

第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

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